近年、犬は番犬やペットというより家族の一員として迎え入れる飼い主さんが増えていますね。
犬の健康を気遣ったフードはもちろんのこと、デンタルケアへの関心も高まっています。
ペットショップやインターネット通販などでも、さまざまな種類の犬の歯磨きグッズが販売されているのを目にしますよね。
ところが、犬のデンタルケアについて悩みを持つ飼い主さんは多いようです。
犬の口臭が気になるけど、どんなグッズを使えばいいの?
犬が嫌がって歯磨きができないときはどうすればいい?
そこで、犬が歯磨きをしないことで起こるリスクや、歯磨きのお悩みに合わせたグッズの選び方についてお話ししたいと思います。
今回の記事でわかること
- 犬にも歯磨きが必要な理由
- 歯磨き嫌いの犬が歯磨きに慣れるための5つのステップ
- 歯磨きグッズの選び方
- 正しい歯の磨き方と歯磨きの頻度
なぜ犬も歯磨きが必要なの?
口腔内のトラブルといえば虫歯を想像する方が多いと思いますが、犬は虫歯になりにくいです。
それは、人の唾液は虫歯菌が好む弱酸性なのに対し、犬の唾液はアルカリ性のため虫歯菌が繁殖しにくい口内環境だからです。
では、なぜ犬の歯磨きが重要視されるのかというと、さまざまな全身疾患を引き起こす原因となる歯周病を予防するためなのです。
ペットとして飼われている3歳以上の犬の約80%はなんらかの歯周病にかかっているといわれていますが、歯周病とはどのような病気なのでしょうか。
歯周病とは
犬も人間と同じように、歯を磨かないでいると歯の表面に歯垢がたまっていきます。
歯周病菌の集まりである歯垢が歯と歯ぐきのすきまにたまっていくと、やがて歯ぐきが炎症を起こし歯肉炎となってしまいます。
これが歯周病の始まりですが、歯肉炎の段階であればブラッシングで歯垢を落とすことにより炎症をおさえられるのです。
ところが、歯垢がついたまま放置してしまうと唾液と結びついて石灰化し、ブラッシングでは落とせない歯石に変化します。
歯石には歯垢がたまりやすいため、さらに歯肉炎が悪化し、歯磨きでは治せない重い歯周病になってしまいます。
人間の場合は歯垢が歯石へと変化していくのに20日ほどかかりますが、犬の場合は2~4日で石灰化してしまうため歯周病になってしまう犬が多いようです。
歯周病になるとどうなるか
歯肉炎を放置してしまうと悪化し、歯ぐきの痛み・出血・口臭の発生・膿が出るなどの症状が現れます。
やがて歯肉や歯を支える歯槽骨(しそうこつ)といわれる歯周組織が溶け、歯が抜けてしまうことも。
歯周病がひどくなると、歯周病菌が血管を通って脳や心臓など全身に運ばれて重い病気を引き起こす恐れがあるのです。
以前、歯周病が悪化し、頬骨まで歯周菌が到達し一部溶けてしまったというお客様のワンちゃんにお会いしたことがあります。
破壊された歯周組織は元に戻りません。
ワンちゃんが歯周病にならないように予防することが大切です。
嫌がる犬を歯磨きに慣れさせるには
犬にとってデンタルケアが重要だとわかっていても、犬が歯磨きを嫌がったり口を触らせてくれなかったりして歯磨きができないと悩んでいる飼い主さんはとても多いようです。
なぜ犬は歯磨きを嫌がるのか、その理由と歯磨きに慣れさせる方法をご紹介します。
歯磨きを嫌がる原因とは
犬は足先、口元、しっぽなど体の先端部分はとても敏感なので触られるのを嫌がります。
特に口元は触られるのを嫌がる犬が多いので、無理に歯を磨こうとして歯磨き嫌いになってしまい、飼い主さんが歯磨きをあきらめてしまうケースも多いのです。
また、どうしても口元を触らせてくれない場合、すでに歯周病になっていて触られると痛みを感じるため嫌がることもあります。
ただ、あなたのワンちゃんがいつも口元を触られるのを嫌がっている場合、痛みを感じているからなのか触られたくないだけなのか区別がつきにくいため、気をつけなければいけません。
もし、次のような症状がある場合は歯周病の恐れがありますので、すぐに動物病院に連れて行きましょう。
- 歯ぐきが変色している
- 膿が出ている
- ひどい口臭がする
歯磨きに慣れさせるための5つのステップ
口元に触られるのを嫌がって歯磨きができないワンちゃんも、口元には触らせてくれるけど歯磨きが初めてというワンちゃんも、いきなり歯ブラシを口に入れようとしてはいけません。
歯磨きに慣れさせるための5つのステップをご紹介しますので、焦らずに進めていきましょう。
犬の好きなおやつを用意し、口元に軽く触ってみて嫌がらなかったらおやつを少し与えるということを繰り返しおこない、口周りに触ることに慣れさせます。
口元に触るのを嫌がらなくなったら口をめくってみます。
口の中を嫌がらずに見せてくれるようになったら、まずは指で歯の表面を触ることから始めてください。
触らせてくれたら少量のおやつを与え、嫌がったらやめることが大事です。
触りやすい前歯などから始め、少しずつ触る時間を長くしていきましょう。
奥歯まで触れるようになったら次のステップに進みます。
濡らしたガーゼやシートを指に巻き、歯を磨きます。
一度に全部の歯を磨こうとせず、1日目は前歯1本を少しこする、2日目は前歯2本を少しこする、3日目は横の歯をというように、少しずつ慣れさせていきましょう。
犬が嫌がる前に終わりにすることが大事です。
すべての歯をガーゼで磨けるようになったら、次は歯ブラシに慣れさせます。
いきなり歯ブラシで磨くことはせず、歯ブラシを軽く歯に当てて慣れさせていきましょう。
歯ブラシで歯に触れることに慣れたら、歯ブラシで磨きます。
前歯を軽くこすることから始め、最終的に歯周ポケットや歯の裏側まで磨けるように慣れさせていくとよいでしょう。
ガーゼや歯ブラシが乾いていると痛みを感じやすいので、水で濡らしてから磨いてあげてくださいね。
歯磨きを習慣化させるには、犬を歯磨き嫌いにさせないことも重要です。
- 嫌がってステップが進まない場合は、犬が好きな味の歯磨きジェルやペーストを使ってみる
- 少しでもできたら褒めたりおやつをあげたりして、歯磨きが楽しいことだと覚えさせる
- 犬が嫌がったときは、無理強いせずに翌日に再トライするなど気長に取り組む
口臭など歯周病の症状もないのに、飼い主さんが口元を触ることに抵抗したり暴れたりなどの問題行動が見られる場合は、犬との主従関係ができていないことも考えられます。
そのような場合は、犬の鼻先から口元を軽く握ってしつけるマズルコントロールや、犬の動きを制御して主従関係を築く練習となるホールドスチルをおこなうことが必要です。
ワンちゃんが暴れて口元に触ることが難しいようでしたら、まずはマズルコントロールをしてみましょう。
詳しいやり方は、こちらの動画をご覧ください。
ホールドスチルは主従関係を築く練習にもなるので、暴れたり興奮したりしても落ち着かせることができるようになります。
主従関係ができれば歯磨きがしやすくなるだけでなく、飼い主さんの指示を聞くことができるワンちゃんになるでしょう。
引用:【公式】しほ先生のイヌバーシティ
歯磨きグッズの選び方
犬の歯磨きグッズにはたくさんの種類があるので、どれを使うべきなのか迷ってしまいますね。
それぞれのグッズの特徴や、どのようなときに使うべきかをご紹介します。
歯磨きガム
歯磨きガムを噛ませることで歯の汚れや歯垢を落としてくれます。
歯垢は唾液中のミネラルと結びついて歯石になりますが、犬の場合、上あごにある1番大きな奥歯の近くに唾液の出る場所があるので、奥歯に歯石がつきやすいのです。
歯磨きガムは与えっぱなしにせず、歯石がつきやすい奥歯で噛むことができるように飼い主さんが手に持った状態で噛ませるようにします。
デンタルケアを歯磨きガムだけに頼らず、歯磨きができるようになるまでの補助として使用しましょう。
歯磨き用おもちゃ
犬の歯磨き用おもちゃは、噛んで遊ぶことで歯の表面の汚れを落としてくれます。
さまざまな素材や形状のものがあるので、飽きずに遊べるものを選べばストレス解消にもなります。
犬の体の大きさに合ったものを選ぶのはもちろん、噛んでいて体内に入ったときに害のないものを選びましょう。
おやつを入れられるもの、歯磨きペーストを入れられるもの、匂いがついているものなどもあります。
歯磨き用おもちゃも、歯磨きの補助的なものとして利用しましょう。
歯磨きシート・ガーゼ
ワンちゃんが口を触ることに慣れたら歯磨きシートやガーゼを使って歯を磨きます。
指に巻き付けて使うもの、指サックタイプ、手袋型などがあります。
指から外れて犬が誤飲しないように、しっかりと指に巻き付けて使用してください。
歯磨きシートで奥歯まで磨けるようになったら、歯ブラシへとステップアップしましょう。
歯磨きペースト・ジェル
きちんと歯垢が落とせていれば、必ずしも歯磨きペーストやジェルが必要なわけではありませんが、使用するメリットもあります。
- 歯磨きを嫌がるときに、犬が好きなフレーバーがついたものを使用して慣れさせる。
- 歯垢をつきにくくする、歯周病菌の繁殖を抑えるなど、効果のあるものを使用して念入りにケアをする。
歯磨きペーストを使用したあと、口をゆすぐ必要はありません。
人間用の歯磨き粉は犬に害のある成分が含まれているため、絶対に使用しないでください。
食べるタイプ・飲むタイプ
歯磨きができない犬や唾液の量が少ない老犬に与え、口内環境を整えます。
- 飲み水に混ぜるリキッドタイプ
- フードにふりかける顆粒タイプ
- 寝る前に直接食べさせるタブレット
ワンちゃんの好みによって選びましょう。
口臭を抑える効果や、お腹の調子をよくする働きもあります。
歯ブラシ
歯ブラシは、人間用だとブラシが硬く犬の歯ぐきを傷つけてしまうこともあるので、ペット用の歯ブラシを使います。
犬の口にあった大きさの歯ブラシを選びましょう。
指サックタイプの歯ブラシは指で磨けるので、歯ブラシに慣れる前のワンちゃんの歯磨きにピッタリです。
使用する際は、指から抜けて犬が飲み込んでしまわないように注意が必要です。
最終的に、歯周ポケットまで磨ける一般的な歯ブラシが使えるようにしていきましょう。
飼い主さんの指の感覚に近いものから歯ブラシへとステップアップしていき、その他のグッズはワンちゃんの好みに応じて補助的に利用するといいですね。
歯磨きのやり方と頻度
歯磨きに慣れさせるためのステップで歯ブラシを使うことができるようになったら、正しい方法で歯磨きをします。
歯ブラシを使った磨き方
- 初めからすべての歯を磨こうとせず、前歯、横の歯、奥歯へと少しずつ歯ブラシで磨くことに慣れさせ、犬が飽きる前に終わらせる。おやつや歯磨きペーストなどを利用してもよい。
- 犬が痛がらないように力加減に気をつけ、歯石がつきやすい奥歯を丁寧に磨く。
- 奥歯まで磨けるようになったら、歯と歯ぐきのすきまの歯周ポケットの汚れをかき出すように優しく磨く。
- 最終的に口を開けて歯の裏側まで磨けるようになれば完璧。
歯磨きは、歯垢が歯石化しないように2~3日に1回のペースでおこないます。
歯磨きをしない日は、 歯に汚れがつかないように 歯磨きガムやおもちゃなどのグッズを利用してください。
まだ歯磨きに慣れていないワンちゃんは、今日は前歯、明日は奥歯というように、間をあけずに毎日少しずつ磨いて慣れさせましょう。
ワンちゃんの歯磨きを習慣化させるには、歯磨き嫌いにならないようにすることが大切ですよ。
犬も歯磨きは必要?グッズの選び方とケアを習慣化させる5つのステップ
今回は歯磨きについてお伝えしました。
今回の記事でわかったこと
- 犬は歯周病になりやすいので、歯周病が引き起こすリスクから守るために歯磨きをする必要がある
- 歯磨きを嫌がる場合は口に触られることに慣れさせ、少しずつ歯磨きへとステップアップする
- 歯磨きに慣れるまでは補助的に歯磨きガムなどのグッズを利用する
- 歯磨きの頻度は、慣れるまでは毎日、慣れたら2~3日おきにおこなう
犬も人間と同様、歯周病を放置すると歯が抜けてしまったり、重大な病気になってしまったりすることがあります。
そのため、できるだけ早い段階から歯磨きを取り入れ、歯ブラシを使った歯磨きを習慣化することが大切です。
歯磨き嫌いにならないように、ワンちゃんが好きなフレーバーの歯磨きジェルを利用したり、歯磨きガムやおもちゃなどを併用したりして焦らずに進めていきましょう。
また、歯磨きをしてあげたいけど、嫌がって唸ったり噛んだりするので歯磨きガムだけのケアになってしまっているとお悩みの場合、まずはワンちゃんとの関係を見直す必要があります。
あなたのワンちゃんの歯磨きが習慣化し、健康で過ごせますように。
最後までお読みいただきありがとうございました!